
POSTOという〈カフェ〉をご存知ですか?
2021年に仙川駅近くにオープンして以来、小さいお子さんからシニアまで多様な年代の人たちが立ち寄り、のんびり過ごしたり、遊んだり、おしゃべりしたり、ポップアップのお店が現れたり、イベント会場になったりと多様な表情を見せてきました。
郵便局の目の前にあるPOSTO。ウッドデッキを備えたおしゃれな外観が目を引きます。店内に入ると、店内の壁一面には大きな木々や鳥たちが描かれていて、長く伸びる曲線が印象的な二段のベンチに…え?すべり台!
腰高の本棚を囲むように設置されたソファは談話室のようで、奥には飲み物や軽食を提供するキッチンスペース。カウンター前の一角は小さなテニスショップになっていて、テニスラケットのガットを張り替えるストリングマシンまであります。もう、なにがなんだか…。

▲とある日の朝のPOSTO
大きな掲示板には「一緒にこんなことをやろうよ!」といったメンバー募集のメモや、POSTOへのお礼の手紙などがぎっしり。
さらに奥へ進むと、さまざまな道具や工具を揃えた作業室(1日100円で利用可能)もあります。

▲POSTOの掲示板。参加費100円の「百円クラブ」は、誰もがちょっとした思いつきで企画できるイベント。
「注文をしなくてもいい」カフェ?
この場所に集うみなさんが、口々に「一言でどんな場所か説明するのは難しい」と話すのも納得のPOSTO。運営者の一人である田中東朗さんにお話を伺いました。

―オープンから5年、今はどんな感じなのでしょう?
田中さん:赤ちゃんからシニアまで、幅広い年齢の人たちが出入りする場所になりました。実は、この店を開いた当初から「自分たちと同世代(20~30代)の人たちも来てくれたらいいな」というひそかな目標もあったのですが、その夢も少しずつ叶いつつあるかな…(笑)。
―いろいろな方たちの居場所になっている…
田中さん:そうですね…でも、「地域の居場所」と表現されるのはちょっと…本意ではないというか。「居場所」という言葉は最近よく使われるようになりましたけれど、いろいろと思うところがあって使うのを避けています。僕がこの場所を紹介するときには、「注文をしなくてもいいカフェです」とだけ言うようにしています。正直なところ、「ほんのもり」(※)の立ち上げ時は、何をしたいのか、何をしているのかが明確ではありませんでした。ふざけ半分でやっているうちに、徐々に見えてくるものがあったという感じです。
※2018年10月、緑ヶ丘団地内に田中さんたちがオープンした、さまざまな使い方ができる喫茶室。
―最近は演劇での利用も増えているようですね。
田中さん:「POSTO」の立ち上げ時には漠然とした憧れから、演劇でも使われたらいいな~と思っていたのですが、ありがたいことに、そのような機会も増えてきました(※)。
※普段は出入り自由。演劇や音楽などのパフォーミングアーツに限っては貸し切りで対応。
―なぜ演劇がいいと?
田中さん:演劇を見ることは、ちょっと雑な表現ですが、一冊の本を読むようなものだと感じています。それは僕の中で、POSTOに本を置いて、「どうですか」と貸し出すのと似ています。子どもにも大人にも、ぜひ演劇を観て欲しい。演劇が身近になることは、その人なりの生きていく強さみたいなものにもつながっていくのではないかと思います。

▲本棚が店内のあちらこちらに(選書:田中さん)
―演劇と読書は似ている…そういえば田中さんはPOSTOで、学習塾「読む塾」(小・中学生対象)を続けていますが、いったいどんな塾なのでしょう?
田中さん:「読む塾」は読む力をつける塾。読む力は生きていく力だと考えています。塾では主に小説、物語文をその子の年齢などに合わせてこちらで選び、読んでもらっています。
―小説や物語文を選ぶ理由は?
田中さん:子どもたちには学校や家庭を離れて、「一人になる」時間を過ごしてほしいと思っていて、そのための装置が物語。物語を読んでいる時間は、日常を切り離しやすいと思うのです。POSTOに来ている大人たちにも、日頃から本をたくさん貸しています。

▲店内奥の「図書室」にも本がいっぱい。児童文学や図鑑もあります。
聞いてみました!「POSTOってどんなところ?」
インタビュー当日は田中さんの声かけのもと、よくPOSTOで活動をしたり、思い思いに利用しているみなさんが、たくさん駆けつけてくださいました。

▲演劇ユニット 一限休講【企画】のお二人。週末にPOSTOで開催する夏の子ども向け演劇公演の準備中。
領家さん:POSTOでは2024年から不定期に活動させていただいています。が、ここは音の響きが良く、まるで劇場のようでもあります。私たちは「ディバイジング(集団創作)」という手法(演者だけでなく関わる全員、参加してくれる子どもたちとも一緒に創作)をとっているのですが、POSTOにはなぜか知らない人同士でも自己開示しやすい、不思議な空気感があります。
塚本さん:POSTOでは私たちが「先生」なのではなく、自分と同じ「演劇を作る人」として子どもたちと出会っている感じがします。型にとらわれない活動ができますね。

▲介護と育児のダブルケアについて、当事者の立場から情報を発信する「tazulabo」の大澤さん。
大澤さん:私は高校生のときから仙川に住んでいるのですが、市外の高校だったので地域とのつながりはありませんでした。POSTOは何度も通りかかってはいたのですが、初めて足を踏み入れたのは「tazulabo」のパネル展の会場候補として。はじめは知人に提案されてのことでしたが、今では子どもも私もPOSTOが大好き。いつか母とも一緒に来たいです。
「無理に誰かと交流しなくてもいい」が嬉しい

▲仙川と京都の二拠点で活動する劇団、「劇団しようよ」の富沢さん(右)と沼田さん(左)。仙川での活動拠点はPOSTOです。
富沢さん:2023年に初めて公演をさせてもらったことに加えて、「おらほせんがわ夏まつり」の時は、毎年、POSTOで「みたらしドッグ」(中身がみたらし団子のアメリカンドッグ)を販売させてもらっています。母校の名物スイーツなのですが、東朗さんに相談したら「いいよー」と言ってもらえて。
田中さん:演劇をやっている団体が、地域とどう関わっていくのかにも関心があるんです 。
沼田さん:みんなそれぞれコミュニティに合わせて「顔」を使いわけていると思うのですが、POSTOには「(ここで)必要な顔」がないですね。ここに来ている時間は、無理に誰かと話をしなくても大丈夫。そういう場所があることで、精神衛生上とても楽になっていると感じます。
それぞれの「やりたい」をPOSTOで

▲Lagurusの木村さん。ブライダルや空間装飾など、幅広く対応するオーダーメイドの花屋さん。
木村さん: Lagurusは実店舗を持っていないので地域と関わることが難しかったのですが、POSTOに定期的に出店する中で、地域の人たちとの関わりが生まれました。ただ植物を売るだけではなく、購入後のケアにも携わりたいと考えていましたし、お客さんが購入しなくても「この前の…」と会話ができます。POSTOは私にとって、やりたいことを相談できる、実現できる場ですね。

▲アートスペース&手仕事ギャラリー「ツォモリリ文庫」のフードディレクター、小栗さん。
小栗さん:ここは初対面の人とも話しやすい、関わりやすい場ですね。東朗さんと小説の話ができるのが楽しいですし、人見知りの孫もここに来ると「東朗は?」と聞いてきます(笑)。

▲シンガーソングライターの長谷川さんは、POSTOの草野球チームを結成!
長谷川さん:いわゆる普通のライブハウスで歌う魅力はもちろんあるのですが、そういう場所に音楽を聴きに来る習慣のある人たちだけでなく、もっと、働いている人や子育てをしている人に聴いてもらえたらという思いがあって。POSTOはそれが叶う場ですね。

▲生まれ育った場所なのに、仙川は地元ではないと感じていた、とあつしさん
あつしさん:中学からずっと市外通学だったので、いざ大学を卒業したら、まちを歩いていても、通りすがる人を誰も知らないんですよね。自分に合うコミュニティを方々探してみたのですが、どこもご年配の方か、子育て世代の方が多くて。POSTOはなんだか怪しくてスルーしていたのですが(笑)、勇気を出して入ってみたら、ここだ!と。

あやのさん:ずっと気になっていて入ってみたところ、それからは一人でも、子どもとでも、家族や友人とも、いつもPOSTOに来ていますね。
はるかさん:POSTOは、いわゆる公共施設ではないからこそ良いと思っています。利用する人たちのやりたいことや気持ちにグッと寄り添い、こまやかに手を伸ばしてくれるところが魅力です。みんながフラットな関係性で集まれる場所です。
まさおさん:POSTOの隣にあるシェア型本屋「センイチブックス」で、棚主をしています。POSTOはマイペースに過ごすことができるところがいいです。誰かと話したり話さなかったり、いい意味で干渉がないですね。あ、それと読む塾や本の貸し出しがあるところもいいなと思っています。

▲前列左がはるかさん、後列左から4人目がまさおさん。

▲運営者の一人である富池さん「いやあ、POSTOっていい場所だなあ(笑)」
日々の積み重ねがPOSTOをつくる
―みなさん、それぞれにPOSTOのよさを感じていますね。
田中さん:ここまで、本当に人に恵まれていました。関わる人が増え、活動が増えていって。とにかく一日一日続けていくことが大事だなと感じます。オープン当初は長期的なことを考える余裕はありませんでしたけれど、みんなで作戦を立てつつ、この先10年くらいは続けていきたいですね。
田中さんたちの作りたいものは「誰かのための特別な場所」ではなく、自分たちにとって楽しいことが実現できる、快適な場所。その自然体の姿が、集うみなさんにとっても心地よく、「自分はこうしてみたい!」と口に出したくなるような空気感を感じた取材でした。
まだまだ新たな動きがありそうなこれからのPOSTOに、ぜひご注目ください!

取材・執筆・撮影:コサイト編集部(NPO法人ちょうふ子育てネットワーク・ちょこネット)
POST
- 火曜日定休 午前8時~午後8時
- 調布市仙川町1-19-10 090-4244-0307
- ちょみっとコラム「POSTO」2022年掲載記事はこちら

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