地域コミュニティは、その地域に住む方々が快適に暮らし生きていくためにとても重要な存在です。
今回は、調布市内の小学校区ごとの地域コミュニティ「地区協議会」をご紹介。実際に活躍されている方々に、参加したきっかけや、地区協議会の取り組みを通じて感じている魅力、そして未来に向けた展望についてお話を伺いました。

【各地区協議会役員のみなさん】
高橋一明さん(第三小学校地区まちづくり協議会会長)(写真左)
佐藤惠子さん(多摩川地区協議会副会長)(写真中央)
平澤和哉さん(石原小学校地区協議会代表)(写真右)

地区協議会に参加した「それぞれのきっかけ」

―みなさんが地区協議会に参加した経緯をお聞かせください。

高橋さん:知り合いの方から自治会に誘われたことがきっかけです。その後、調布市で二番目となる地区協議会「上石原まちづくり協議会」として活動を開始しました。そして、より多くの地域住民に参加してもらえるようにと「第三小学校地区まちづくり協議会」と名称を変更し現在に至ります。

高橋一明さん「地区協議会発足前から地域活動に携わっています」

 

平澤さん:石原小学校地区協議会は、平成11年に、調布市内で最初に設立されました。私は現在、青少年ステーションCAPSを運営しているNPO法人ちょうふこどもネットの代表をしているのですが、この団体が法人化した平成19年に当時の代表が地域の方にお声かけいただいたのがきっかけです。当時は「地域につながることは大事だよね」という考えのもと、そしてCAPSをもっと知っていただきたいという思いから参加させていただきました。

平澤和哉さん「活動をきっかけにつながりが増えているように感じます」

 

佐藤さん:私はもともと地域デビュー推進員として活動をしていた中で、調布市の協働推進課の方から「多摩川小学校地区には地区協議会がない」と伺い、ぜひ立ち上げたいという想いから設立に携わることになりました。作り方もわからない中でのスタートでしたが、健全育成委員会に頼れる方がいたことや小学校の校長先生、開放委員の方々からも賛同をいただいたのは大きかったです。また、他地域の地区協議会の会長さんたちから、活動のメリットなどについてたくさんお話を聞かせていただけたことも、活動の原動力になりました。

 

―実際にどんなメリットがあると…?

佐藤さん:たとえば地域の人たち同士のコミュニケーションが深まり、人脈が広がり、自然と協力し合えるムードが生まれるといった話を伺いました。私達の地域は多摩川のすぐ近くということもあるので、ならば多摩川地域では「防災」をテーマに、と活動をスタートしました。

佐藤惠子さん「たくさんの方々に協力いただきながら地区協議会を立ち上げました」

 

―多摩川地区協議会では「防災」に力を入れているのですね。他の地区はいかがでしょうか。

平澤さん:私達の地区協議会としては、オリジナルの事業は原則として「やらない」方針で活動しています。というのも、石原小学校地区協議会ではいろいろな団体がつながって組織されているため、それぞれが多様な事業をすでに行っているからです。ただ、つながっていることのメリットはあります。たとえば地区協議会内でお互いの情報を共有することにより、石原小地域で開催するイベントの日程がかぶらないように調整したり、地区協議会のメンバー同士が互いの事業に協力し合ったりすることも多いです。原則事業をやらない私達の地区で開催している事業は2つ「花いっぱい運動」及び「どんぐり林公園の整備」です。鬼太郎公園の花壇に花を植えたり、どんぐり林公園で落ち葉溜めを作り、花壇に使う肥料を作ったりしています。この活動には地域の子どもたちも参加してくれるので、地域のつながりが広がっているなあと感じます。

どんぐり林公園の落ち葉はこの場所で堆肥に生まれ変わります。

 

高橋さん:第三小学校地区まちづくり協議会では、設立当初から学校と地域が一体となった防災訓練を27年間継続して実施しています。1,000人ほどが参加し、地域全体の防災意識を高めています。

 

―1,000人規模となると相当な人数ですね。

高橋さん:防災訓練は小学校とも連携して実施しているので規模が大きいのです。毎年のことなので、低学年は「けむりトンネル」、中学年は「消火器体験」、高学年は「燃焼実験」と、子どもたちにも興味を持ってもらえるように工夫を凝らしながら実施しています。また、地域の情報を掲載した広報誌も制作しています。

第三小学校で行われる合同防災訓練には多世代が参加

地区協議会が存在する価値とは

―「地区協議会があって良かった」と感じたエピソードはありますか?

高橋さん:活動を続ける中、近隣の地区協議会とも連携できたからこそできたことがあります。それは2015年に、調布飛行場発着の小型飛行機が富士見町にある住宅に墜落する大事故が発生したときのことです。事故後、近隣の地区協議会や自治会など6団体が協力し合い、安全対策や被害者への補償についての要望書を東京都に提出することができました。短期間で多数の署名が集まったのは地域のネットワークがあったからこそだと思っています。結果として、被害を受けた住宅の再建の費用に対する補償金も出してもらえることになりました。

 

―大変なときほど、地域のつながりは心強いですね。

佐藤さん:多摩川地区協議会でも、毎年「水害に特化した避難訓練」を実施しています。消防団や地域の団体と協力して行う「防災フェス」では、アルファ米と豚汁の炊き出しを地区協議会として行ってきました。より多くの子どもたちに参加してほしいと考え、2年前からはカレーライスの炊き出しを行っていまして、300人分作っても足りなくなるほどの盛況ぶりです(笑)。また、老人会の方や若いお母さん、子どもたちなど、多世代で和気あいあいと、コミュニケーションを深める機会にもなっています。イベント時には多摩川地区協議会ののぼり旗を立てているので、目にすることで存在を知ってもらえる機会にもなっていると思います。

多摩川小学校での炊き出しの様子。コミュニケーションを楽しみながらも作業の手は止まりません。

 

平澤さん:石原小学校地区協議会も広報誌を発行して、全戸配布しています。すると、広報誌を見て総会に来てくださる方がいたり、近年ではゴミ拾いをしながら地域をまわるパトロール隊にたくさんの子どもたちが参加してくれるようにもなりました。終了後にPTAからお土産が配っていただいたり、調布市の環境政策課の方にも参加いただいていたりと活動の輪が広がっています。

高橋さん:子ども同士が集まる場所も機会も少なくなっている今、地域でイベントを行うと、子どもたちがとても楽しそうにしているなと思いますね。

佐藤さん:多摩川地区協議会では、「探検隊」という名称で地域のパトロールを行っています。ネーミングに魅力を感じてくれているのか、大人も子どもも楽しんで参加してくれています。普段通らない道を歩いたりするので、ちょっとした探検気分になれるんですよ。

 

―楽しそうですね!しかし、やはり地区協議会というと「活動が大変そう」というイメージもあります。

佐藤さん:地区協議会メンバーは仕事をお持ちの方も多いです。共働きの家庭も増えているので、できるだけ作業は分担し、負担が軽減するように心がけ、「無理なくできる範囲で」ということを常に意識しています。今では大学生世代の参加があったり、高齢者向けの「スマホサロン」を開催して交流したりと、とにかく多世代が「楽しい」と感じられることを大切にしています。何かあると集まって話ができて、落ち着ける…そんな居場所になっているのかもしれませんね。

 

―いろいろな工夫があるのですね。

高橋さん:それぞれの地域にあった活動を無理なく行うことが大事だと思います。世代による感覚の違いもあると思うのですが、一緒にやっていけるよう工夫しながら「防災」や「広報」などをきっかけに地域の方々に「地区協議会」を知ってもらいたいと思います。

平澤さん:うちの地区の会議は役員会のみで、集まり自体もそれほど多くはないので負担感は少ないです。先輩方と新しい方々が交流をして互いに意見を受け止め、認めあいながら進めているので「入りにくい」雰囲気にならない環境作りができているように思います。子どもが小学校を卒業した後も関わってくれる保護者の方もいます。

座談会ではそれぞれの想いを語っていただきながら時には談笑する場面も。

地区協議会は気軽に関われる「身近な」存在

―最後に、これから地区協議会の活動に参加したいという方々に向けて一言をお願いします。

高橋さん:私は、今の子どもたちが大人になり、調布がふるさとになっていくことを想像しながらやっていきたいと思っています。活動には趣味の会のように気軽に関わってもらいたいですね。

平澤さん:私は、地区協議会も他の団体もそれほどハードルが高くないと感じています。会議に毎回出なければならないということはないと思いますし、周りの人も案外、「今日は来られないんだね」「来られるときに来てね」などと気軽に受け止めていると思います。気負わず、関われる活動ですので、ぜひつながって欲しいなと思います。

佐藤さん:何か「役をやらされる」というイメージがあるかもしれないですが、地区協議会に入ってみると、気軽に入れる縛りのないものだと感じていただけると思います。友達の輪ができる一つの機会だと思って、「会」という名前に縛られずに気軽に楽しんで入ってもらえると嬉しいです。

 

取材・執筆・撮影:コサイト編集部(NPO法人ちょうふ子育てネットワーク・ちょこネット(外部サイト))
取材・撮影協力:調布市青少年ステーションCAPS(外部サイト)